「これ、見せて」


片付けられたテーブルに、今度はそのアルバムが乗る。

元は真っ赤だったはずの表紙は、随分色あせて薄く変わってしまっていた。


「昨日掃除してたら見つけたんだ」

「……勝手に、見ないでよ」

「見てないよ。だから今、こうして頼んでるんだろ」


ぽん、と色あせた赤の上に冬眞の手のひらが乗る。

もうずっと長い間、開いていなかったアルバム。


二度と見ることなんてないと思っていて、だけどなぜか、ここに持ってきてしまったもの。



「……勝手にすれば」


口の中で呟いて、布団の中に潜り込んだ。

「瑚春はすぐ布団に潜るなあ」なんてのんきな声が遠くで聞こえて、アルバムの表紙が捲られるのが、音でわかった。




あのアルバムには、生まれた頃からのわたしの写真が挟まれている。

成長するごとに、いつか大人になったら見ようって、その時その時で一番いい写真を選んでそこに入れた。


笑っていたり、ときには泣いていたり。

どんな感情でもいいから、大切だと思えた瞬間を、いつまでも残しておくために。


きっといろんな記憶はいつかは忘れてしまうけど、それでもちゃんと思い出せれば問題ない。

本当に大切なものは心に仕舞って、忘れそうなくらいにどうでもいいけどなるべく覚えていたいものは、ここに仕舞うことにした。


それは“わたしたち”の、大事な記憶の宝箱。