真夏の暑さが引き始める時期、ひとのいない田舎が賑わいだすと、ああ今年ももうそんな時期かと思ってしまう。

しぶとく暑さは残るものの、それもやがて風に流されていって、植物は色を変えてゆく。

その前のわずかな期間。夕暮れの景色にとけこむ、提灯の赤。
 

田舎なのに、なのか、田舎だからこそ、なのか。

それはわからないけれど、ちいさなお祭りは子どもたちの年に数度の楽しみのひとつだ。

わたしも例外ではなかった。

送り火が終わってから一週間、まるで無事に帰りつけたかをお祝いするように、いくつかの花火があがる。

わずかに並んだ露店でりんご飴を買い、その花火を眺める。

たったそれだけのことなのに、特別な日になる。
 

役員として祭を取り仕切る父、その役員や花火師たちを労うために働く母。

我が家はずっとそうだったから、わたしは自然とコチヤ家のみんなと出かけていた。

「りんご飴なんて、何がおいしいのさ」なんて眉間にしわを寄せながら焼きそばを食べるヒノエの横に座って、毎年空を眺めていた。