すっかり落ち込んでしまった俺をテーブルに着かせた秋本は、「ご飯にしましょう」今日は遠藤もウチで食べるから、とテキパキ声で語ってくる。
お刺身を買ってきたのだと一々報告してくれる彼女に、俺も何か手伝おうか、と尋ねた。
「いいわよ。座っておきなさい」
気遣ってくれる秋本が微笑んできてくれる。
嬉しい反面、落ち込んでいた俺にはすこぶる気まずいと現状に嘆きそうになる。
だって斜め前に遠藤が座っているんだぞ?
落ち込んでいる上に、あいつの視線が痛いのなんのって……、どうしよう。この状況。
これはこれで焦るんだけど。
飽きもせずテーブルと睨めっこする俺は相手をチラ見。バッチシ遠藤と目が合って身を萎縮する。
ま、まじでどうしよう。
背後から聞こえる爆笑番組に目を向けたい。
2011年の番組は1996年の俺にも十二分に楽しめるし。
まあ、俺の知った芸能人が老けていることにはショックを隠せないでいるけどさ。
もう、開き直って清々しく「おひさ」とか言って笑ってやろうか。
現実逃避を起こしていると、「体、平気なのか?」と遠藤から話を振ってきた。
「え、あ、はい。もう……大丈夫です。ありがとうございました。お手数掛けました」
折角の話題も、たどたどしい敬語せいでおじゃんだ。俺の阿呆。
ほらぁ、思った傍からなんで敬語なんだよ、遠藤に苦笑いされたし。
でも、俺の知る遠藤は中学生なんだよ。
こんな生真面目そうなリーマンじゃなかったんだよ。ほんと、働くお兄さんって感じだ。俺の知る遠藤とかけ離れている。
「あ、あの。お兄さん」
途端に麦茶を飲んでいた遠藤から大笑いされる。
「坂本からオニーサン」
そうか、お前の目にはそう見えるもんな。
変な気分だとくつくつ喉で笑う遠藤が、なんだとばかりに視線を飛ばしてきた。
やや間を置いて、「お兄さんは本当に遠藤なの?」俺の知っている遠藤とはまるで別人だと吐露する。
間髪容れず、「お前のことなら何でも知っているぜ」口端を持ち上げる遠藤は、例えばな……と腕を組む。