一度張っていた気持ちが崩れちまうと、もう駄目みたいだ。

糸がプッツリきれたように自然と目尻から感情の粒が流れ落ちる。


嗚呼、気丈に振舞っていても、秋本に励まされても、元気を貰っても、面白い世界を見ても、やっぱ不安だったんだな俺。


不安じゃないわけないじゃんか。

俺の意思関係なしに15年後の世界に飛ばされてみ?

誰だって怖いじゃんかよ。


時間をトリップしただなんて、どっかの漫画や小説でありそうなネタだけど、俺は物語の主人公みたいにその世界を元気ハツラツに冒険なんて出来ないぞ。


だって俺、ただの中坊なんだからさ。


ワケの分からない事象が起こったら畏怖する。現に怖じる気持ちでいっぱいだ。
 

「怖いや」


俺が今、何者で、何処にいるのか、生きているのか、死んでいるのか、それさえ分からない。それが怖い。

失踪事件を起こした俺は一体、誰なんだろう。
なんで此処にいるんだろう。

どうして俺は15年後の世界に飛ばされたんだろう。
 

透き通った雫がジーパンの上に落ちて微かに滲む。

幾度となくジーパンを滲ませるそれは、まるで雨のようだと思った。