「もっかい」寝ちまいたい、俺は現実逃避を口走った。
 
ははっ、今度目が覚めれば150年後だったりして。
それこそ浦島太郎だよな。

150年後の日本はどうなってるんだろうな。

2011から150を足すと2161、西暦になおすと2161年か。

日本国の技術がどう発達しているのか、見てみたいぜ畜生。


なあ、ご神木、これがお前のせいなら飛ばしてみせてくれよ。
 
今度こそ俺は住み慣れた(そして見知らぬ)街を彷徨っちまうんだろ。

そうなんだろ?
 
 

ぽんっと肩に手が置かれた。
 


のろのろと顔を上げれば、追い駆けて来た秋本がキャップ帽を片手に、しゃがんで俺と視線を合わせてくる。

「此処にいたの?」

15年前のことをそっと訊ねてくる教師。

しきりに首を縦に振る俺は、「此処で寝てたんだ」んで目が覚めたら、この世界にいたと涙声で説明。


何もしちゃない。

失踪したいなんて毛頭も思わなかった。


ただ自分の時間が、居場所が、癒しの場所が欲しくて此処に流れ着いた。

この居場所がとても居心地良かったから、ご神木の下で昼寝をしていた。それだけなのに。


スンと洟を啜る俺は何度もご神木の肌を撫でる。

ごつごつとした表面はちょっと硬い。


でも撫で心地は良かった。


「このご神木は俺に優しくしてくれた。此処にずっといていいんだってっ…、流浪人の俺に居場所くれたんだ。
仮にこいつのせいだとしても、俺は責めるに責められないや」
 

だってお前、俺を慰めてくれたもんな。

泣き笑いして相手の体に再度額を預ける。
不思議と心があったまるのは、こいつの優しさからきてるのかな。

自然のあったかさを感じる。
木の幹から良い匂いがする。