「あんたも本当はアラサーよっ」

グリグリと肘で脳天を押し潰してくる。
やっぱその暴力だけは15年経った今も、変わってないんだな!

「俺は15だぜっ!」

まだまだピチピチだと反論。
お肌もまだ若々しい、余計な反論を加えたせいで痛い拳を頂いた。

何かヤな発言があるとそれなんだからもう。

頭を擦って肩を竦めた俺だけど、相手が30だってことにまだ驚きを隠せないと吐露。


まだ言うか、向こうの怒気を無視して一笑した。

 
「だってお前、綺麗だもん。お世辞にも中学生には見えなかったけど、初めて見た時、二十代だと思った。大人になったお前、美人さんだな」
 

いいよねぇ、そんな美人さんの彼氏さんになる人は。羨ましい。

あ、もしや秋本、彼氏がいるんじゃ…。
 

皮肉って気付く。


俺の気持ちはさておいて(どーせ失恋の身だよ!)、ヤだぜ俺、彼氏さんが遊びに来て、俺と遭遇。

「なんだこいつ」と、険悪ムードになって昼ドラ展開勃発とか絶対にヤダ。

15年後の世界で修羅場を迎えるとか、究極にヤダ!


まあ相手は中坊だから、そういう対象には見えないかもしれないけど、秋本は教師だしさ。


もしかしたらもしかすると…、うへっ、彼氏さんが訪問して来たら俺は浴室に隠れておくぞ。
 

「んー、そう考えると俺、いつまでもお前のところにお邪魔するのもアレだよな。弱ったな。数日間で決着がついたらいいけど」


ずっとこのままだったらどうしよう。

暗い方向に思考が回る。
ゾッとした俺はブルッと身震い。早くどうにかしないと、なんで此処に来たか、どうやって此処に来たのか、原因を探って。

んでもって15年前に帰らないと。



……帰っても俺に居場所って居場所、ないんだけどさ。