いつも鬱陶しいとあしらっていたことを思い出す。
ああそりゃもう、俺にとっては今日ことだから鮮明に思い出せる。
おはようの挨拶から皆とあからさまに違っていたあの態度。素っ気無いこと極まりなかった。
気にしないよう努力していたけど、あれ、意外と堪えるんだって。
皆と区別されているようでさ。
それでも好きと言っていた俺は物の見事に、放課後、間接的ではアリマスガ、彼女にフラれたという。
俺の告白はあしらって、他人には可愛らしいはにかみってどういうことだよ。
堪えるってもんじゃないぞ。
誰だって嫌われているって思っちまうだろ。
常日頃から疎ましそうに悪態ついてたしさ。
メンタル、そんなに図太くないから、俺だってショック受けたぞ。
「お前に世話になる理由ないし、俺、行くよ。気持ちだけ受け取っとく。ありがとうな」
手を放させようと振り払う。
けど、向こうは握力を強くするばかり。一向に放してくれない。
「秋本?」
なんで放してくれないんだよ、瞬きして彼女を見つめると向こうは憤ったような、悲しそうな、入り乱れた感情を露にしていた。
「これ以上」やっと口を開く秋本は、大きな声音で俺に告げる。
「これ以上、心配掛けさせないでよ。坂本、此処にいて、いてよ」
思わずたじろいでしまう。
秋本の剣幕に押されてしまった。相手が大人だから尚更、押された。