「時間が廻り始めたんだ。俺にはそう、時間がない」
ふわっと俺を慰めるに風が頬を撫でてくれる。
微苦笑を零して、俺は紫に染まる2011年の空を仰いだ。
俺の中の時間が廻り出した。此処に留まれる時間が廻り出してしまったんだ。
今まではきっと、俺の中で止まっていたに違いない。
だけど、今、俺の中ではっきりと感じる。時間が廻り出したことを。
少しずつ分かる時の流れに俺は微苦笑を漏らす。
なんでそんなことが分かるか、ンなの俺でも説明がつかない。でも廻っていることには違いないんだ。
じゃあ廻り出した契機はなんだろう。
そんなの俺自身が分かっている。
俺がどうして此処に来たのか、なんで此処にいるのか、此処で呼吸をしているのか、それが今なら分かるように、廻り出したきっかけも分かる。
俺の中で拒絶を始めているんだ、2011年の世界を。
秋本や遠藤、それから島津、永戸が俺に仲良くしてくれている。俺はそれが嬉しい。
だけど、俺自身、じょじょに理解し始めている。
此処は俺のいるべき世界じゃないって。
―…そう、15の俺がいていい世界じゃないんだ、此処は。
「俺は探さないといけないんだ。残した居場所探しを」
永戸には偉そうなことを言ったけど、俺もまた旅人。2011年にやって来た1996年人。
死んでいるのか、生きているのか、それはまだ分からないけど、俺は時間の許す限り、行動を起こさないといけない。
だってもう、俺には時間がないんだから。
このままじゃ俺は確実に後悔して消えてしまう。
時がリバウンドしてアラサーになる説はない。本能とご神木が教えてくれるんだ。
嗚呼、俺は数日も経たないうちに2011年から消える。
これだけは確信を持って言えることだ。