「郵便屋さんって何してるの?『とく』つまないの?」
「私は亡くなられた・・・天国に行く方へ道案内してるんだよ?こっちだよって、今から修行始まるよって教えてるんだよ」
「ママにも教えたの?」
「もちろん」と頷いた。
ツナミが大きな仏壇に興味を示して席を離れた時にボクは思わず言ってしまった。
「恥ずかしい話なんですが、4年経っても妻が生きてる気がして・・・死を受け入れられないんです」
ボクの言葉に住職は優しく頷いた。
「無理して忘れるたり受け入れる必要はないです。それは高柳さんがどれほど奥様を愛していたのかの証明です。一生忘れられなくてもいいんですよ。」
「一生・・・いいんでしょうか・・・。生前の妻と約束しました。再婚はしないって、ボクが死ぬ時は必ず迎えに来てくれるって。再婚はしませんが、ボクが死ぬ時、本当に彼女は迎えに来てくれるんでしょうかね・・・」
「生前固く約束したのであれば必ず迎えに来てくれますよ?そして今もあなたとツナミちゃんを見守っているはずです。だから忘れなくても過去にしなくてもいいんです。あなたがしたくない事を無理にする必要はありません」
住職に諭されて、ボクの気持ちは不思議と少し軽くなった。
『このままでいい』
きっと誰かに言ってもらいたかったんだ。
周りは「未来」をとボクにいつも言うけど、それを受け入れられないボクは愚かだとずっと苦しかった。
誰かにそのままで大丈夫だって背中を叩いてほしかった。
聞きたかった言葉を聞けて不覚にも涙が少し出た。
「父ちゃんどうしたの?」ツナミが心配そうに覗いて来た。
「目にゴミが入っただけ」
住職はボクらを優しい顔で見ていた。