席を立った彼と交代するように明日香があたしの前に座る。
「ルウコちゃんって優しいのねー」
またニヤーってしてる。
「別に、違う!そういうワケではなく怒られるって思ったら・・・」
「思ったら?」
「課題って言うから思わずメモを書いてしまいました」
「高柳、意識しちゃって可愛いね」
「何が?」
キョトンとして聞くと、明日香はため息をついた。
「あんた、『柏木流湖の上目遣い』ほど凶器なもんないよ?いくらボーっとしてる高柳でもドキっとして赤くなってたじゃん」
「何が凶器なのさ。ふーん、それで赤くなったのか・・・」
自分で言って気がついた。
「え?それってあたしを認識してくれてるって事!?」
「鈍っ!認識ってアホか。そりゃ認識はしてるけど、クラスで唯一あんたを『柏木さん』って呼ばないの高柳だけって知ってた?」
「知らない。だって中川くんすらほとんど話掛けてこないもん」
明日香は面白そうな顔をしている。
「案外頑張れば脈あるんじゃない?ちょっとは意識したでしょ」
「そうかな?そうは思えないんだけどな・・・」
中川くんと楽しそうに雑誌を読んでいる彼を見た。
サッカー雑誌・・・。
「明日香、あたしちょっと頑張ってみようかな?」
明日香は喜んでくれたけど、あたしには『死神』への反抗宣言でもあった。