とりあえず『今後はツナミに母親の話はしない』と約束をさせて学校を後にした。
「父ちゃんこれから仕事に戻る?あたしどっちに行けばいい?」
ボクの手を取りながらもいつのまにか「あたし」と言い始めたツナミが言った。
「うーん、ウチはばあちゃん仕事だから綾乃さんの所に行けば?今電話入れるから」
「綾乃さん?超久々ー!寿司食いたいってツナミが言ってたって言って?」
「バーカ、言えるワケねーだろ?・・・あ、もしもし?ソウですけど、ご無沙汰してます」
ツナミのほっぺたをつねりながら綾乃さんにツナミをお願いすると快諾してくれる。
「綾乃さん何て?泊まってもいい?」
ツナミが目をキラキラさせて言った。
ツナミの顔はルウコとよく似てる。『8歳のルウコ』って感じ。
声もまだ甲高いけど、大人びた話し方をするのもルウコと同じでたまにビックリする時がある。
「お前、明日も学校だろ?泊まるの無理!綾乃さんに週末泊まっていいか自分で聞けよ」
携帯をポケットに入れながら言うと「父ちゃんのケチ」と言った。
ツナミがボクを『父ちゃん』と呼ぶのはどうやらルウコがボクを『ソウちゃん』と呼ぶのを勘違いして覚えたからみたいだ。
生前、4歳のツナミがルウコに「ママも父ちゃんって呼ぶでしょ?」と言ってルウコは大爆笑していた。
「自分で聞くからいいよーだ!ルミちゃんのお腹、大きくなったかなー?赤ちゃんいつ生まれるんだろう」
車の中でツナミははしゃいで喋り倒している。
「来年の春だったかな?もう結構大きいんじゃないか?でもルミだってしょっちゅう実家に帰れるわけないんだから会えないかもよ?」
「実家って何?」こういう時は妙に子供っぽいから変なヤツだ。