「では、今回の問題を説明したいと思います」


担任が汗をしきりに拭きながらゴニョゴニョと話始めた。


聞かなくても、ツナミが喧嘩をする時は大体理由は同じ。

『母親がいない』もしくは『父親がチャラい』そんな感じだ。


「ウチのカズトが悪いんですよ、ツナミちゃんお母様がいなくて不憫なのにそれをバカにしたように言ったもんですから・・・」


担任の前に母親が喋り始めてしまった。


(不憫?まぁ、人から見たら不憫なのか我が家は)


黙って事情を聞いているとツナミがバンっとテーブルを叩いた。


「オバサン!ママはいるよ!いないんじゃないもん、あたしママとお話してるから!毎月15日はママに手紙書いてるもん、ママはいるんだから!」


「ツナミ、ちょっと黙ってろよ」


ボクが注意すると不貞腐れた顔で生意気に足を組んでいる。

毎月の15日はルウコの月命日。

墓参りに行く時にボクらは2人でルウコに手紙を書くのを習慣としている。


「高柳さんのご家庭はこういうデリケートな事情がありますので、私も細心の注意を払っているのですが・・・子供なので何故事情がわからず度々ツナミさんにお母さんの事を言う生徒がいる次第なんです」


「でしょうね。いつも聞いてるのでわかってますよ?それと父親のボクが若いって理由もありますよね?もう30なんですけどね、職業柄そう見えるのは慣れてますから」


担任に嫌味たっぷりに言うとまた汗を拭いている。


「高柳さんって30歳ですか?てっきり20代かと・・・」


おいおいカズトのママさん、ボクが20代だったらツナミはいくつの時の子供なんだよ。


突っ込みたい気持ちはあるけどボクも「大人」なので、


「そうですよ?30歳なんです」


と営業スマイルを見せた。