「はい、これをカシャカシャしてね」


ボールと泡立て器を渡すとガシャガシャと混ぜている。


(超こぼれてるじゃん・・・)


周りを拭きながら苦笑いしてしまう。


「綾乃さんもプリン食べたい?」


ガシャガシャ混ぜながらツナミが言った。


「食べたいよ、綾乃さん楽しみにしてるからねー」


お母さんはジャガイモを剥いている。


「お母さん、何作ってるの?」


「ソウちゃんとツナミにビーフシチュー。あんたには肉じゃが」


「食いたい、ビーフシチュー・・・」


呆れた顔であたしを見ている。


「何言ってるの。今は無理でしょ?笹井先生がいいよって言ったら多く作るから薬飲んで食べなさい」


「はいはい・・・」


ツナミの様子を見ると、3分の1はこぼれている。


「ツナミ、こぼれない様にカシャカシャしてね?」


「うん!」ってちゃんと聞けよ、と思ってしまう。


また周りを拭いていると、玄関の鍵が開く音がした。


「ん?ソウちゃんかな?どうしたんだろ」


あたしが出る前にツナミが泡立て器をぶっ飛ばして走って行った。


「父ちゃんおかえりー!」って声が聞こえるからソウちゃんみたいだ。