「あれ?ツナミは?」


待ち合わせた店に行くと、明日香が言った。


「実家ー。泊まるんだってさ、親いなくてもヤツは育つよ」


「じゃあ2人きりなんだ。お邪魔したかなー?」


幹太くんが言った。

すっかりサラリーマンな幹太くんの短髪はいく見ても違和感がある。


「いいんだって。ルウコもたまには遊びたいだろうし」


さっさとビールを注文してソウちゃんが言った。

あたしのメイクの時間で遅刻してしまって、3人は既に飲み始めていた。


「明日香こそ新婚なのに旦那さんいいワケ?」


「いいんだって。毎日見てたら飽きるっての。イケメンならまだ見たいけど、ブサイクだからね」


明日香が言うほどブサイクな人ではない。

でも、ずっと付き合ってた彼氏は超がつくほどのイケメンだったからそう見えるのか。

別れた原因も彼氏の浮気だし、明日香も懲りたみたいで今の旦那さんを選んだのかもしれない。優しそうで人の良さそうな感じだから。


「ルウコちゃん、見て見てー!ようやく幹太が買ってくれたの」


左手の薬指に小さめのダイヤが付いた指輪をミサちゃんが見せる。


「あー、婚約指輪?素敵だねー、あたしも欲しかったな。婚約指輪」


「いらんって言ったのは誰だよ。それにそんなの買う金なかったからね」


「まぁね、高柳家は万年貧乏ですから」


メニューに目を戻して言うと、明日香が呆れている。


「何か所帯染みてるね、とっても結婚して2年だとは思えない」


「子供いるからねー。いなかったらこんな感じじゃないだろうけどね」


「あたししばらく子供いらないや」


明日香がビールをグビグビ飲んだ。