式場の入り口に行くとお父さんが立っていた。
「お待たせー」
ちょっとおどけて腕を組む。
入場までの間、お父さんは過去を反芻するかの様にちょっと遠くを見ながら喋り出した。
「ルウコは子供の頃から人見知りがすごくて、オレにも懐かなかった」
「え?」
「仕事で忙しいお母さんの代わりに泣くルウコを車に乗せて何時間も走った事もある。車に乗るとお前はすぐ寝る子だったから」
黙ってお父さんの話を聞く。
「病気になった時はもうこの世の終わりかと思ったよ。毎日が怖かった。寝ていても、もう目を覚まさないかもしれないって不安で、結婚するまで必ず寝顔を確認してた。よくお母さんと2人で『ウチの娘が何でだ』って泣いたな」
「そうなんだ・・・」
大きなドアが開いて2人で足を揃えてゆっくり歩く。
「でも、こうして嫁に出せておまけに孫まで見れる。だからありがとう」
「うん・・・」
ちょっと涙が出てきた。
「あそこにボーっと立っている男に嫁にやるんだな。まぁ、ルウコがいいならいいんだけどな」
見るとボーっとしているつもりはないだろうけど、ソウちゃんはやっぱりぼんやりして見える。
お父さんと2人で笑ってしまった。
「お父さん、ありがとうって言いたいんだけど、お腹が苦しいかも」
ちょっと窮屈なドレスを指差した。
「え?我慢出来るのか!?」ビックリしている。
「大丈夫」あたしはお父さんに笑いかけた。