「今週の週末、午後から休み取ったからルウコの家に行くよ」
「え?いいのに、無理しなくて」
あたしが言うと「常識でしょ」と言った。
「やっぱスーツで『すいません』だよな・・・、今週オレが挨拶に行って、反対にしろ賛成にしろ来週にはウチの親が挨拶に行く事になってるからさ」
「ソウちゃん言ったの!?」
「言わなきゃ給料の交渉出来ないからな。まぁ、貧乏なりにギリ、ルウコと子供は食わせれるかな?後はルウコが生活費をやりくりしてくれればだけど・・・。後は笹井先生にどうしたらいいか相談と、家探ししなきゃだな・・・」
『生活費』なんてあたし奥さんみたいじゃん!!
その言葉でニヤけてしまった。
「何笑ってんの?オレは嬉しいけど、憂鬱です。ルウコのお父さんにシバかれる」
ウチのアホっぷりを知らないソウちゃんはため息をついた。
(ちょっとだけ意地悪してみようかな・・・)
あたしの中にイタズラ心が出る。
「実は、あたしもさっき両親に言ったんだけど・・・」
「え!?」とやっぱりビックリしている。
「出てくる時、ソウちゃんとって言ったら『連れてこい!』って言ってたよ?ウチに寄れば?」
「こんな時間に?しかもこんな格好で?完全にナメた態度と思われるから無理!出直す。ちゃんとした格好で」
「えー、お父さんが必ず連れて来いって言ってたけど?来なきゃヤバイかもよぉ」
「マジか・・・とりあえずこれは脱がなきゃだな。マジかぁー・・・」
ニット帽を脱いでダッシュボードからヘアワックスを出して(入ってるのが不思議だけど)ルームミラーで無造作に髪を整えた。
憂鬱そうなソウちゃんの顔を見ていると吹き出しそうになるけど、そこは我慢我慢。
ウチに着くまで下を向いて堪えた。