「ごめん・・・」
下を向いて言うと、ソウちゃんの手があたしの頭を優しく撫でた。
「オレこそ怒鳴ってごめん。ビックリしただろ」
「あたしが悪いから。何でこんなにイライラするかわかんない・・・。でもね、あたしの気持ちわかってほしいの」
言った途端に今度は涙がボロボロ出て来た。
昨日、ネットで調べた時に『妊婦は情緒不安定』ってあった気がする。
いつもは何とも思わないソウちゃんののんびりした間にイライラするのはそのせいなのかな?
「気持ちって?」
ティッシュを渡されながら聞かれて、あたしは一気に喋り出した。
「あたしさ、こんな身体だから長生き出来る自信もないし、多分事実出来ないと思うんだ。だから将来もソウちゃんと一緒にいたいけど、ソウちゃんをいずれ独ぼっちにしちゃうんだと思う。もちろん子供なんて想像も出来なかったし。でもね、子供が出来たってわかって昨日、一瞬だけはどうしようって思ったけど、すぐに『産みたい』って思ったの。こんなチャンスはもう二度と来ないと思う。それと・・・」
そこまで言って言葉に詰まってしまった。
「それと?」
ソウちゃんはハンドルに顎を乗せたまま言った。
「・・・例えば、あたしがいなくなってもこの子がソウちゃんのそばにいるから・・・、だからソウちゃんに寂しい思いさせなくていいかもしれない」
ソウちゃんを見ると黙って前をぼんやり見ている。
言わなきゃよかったのかなとも思ったけど、これはあたしの本心だ。
あたしがソウちゃんより先に死んでしまうのは紛れもない事実。
「子供」という存在がソウちゃんを救うならあたしは自分の命に変えても産みたいから。
それと子供とソウちゃんと3人で生きて行くって事を考えると怖くない。
3人で生きてみたい、あたしはそう思うから。
それがどれほど時間が短くても。
だからわかってほしかった。