大学も3年の冬。
周りが就職活動でバタバタしてる中、特に急いでないあたしは変なのかもしれない。
そりゃ、社会に出て働いてみたいとは思うけど。
あたしの病気がストップをかける。
笹井先生に相談したら、「バイトとかその程度なら」って返答。
家族もソウちゃんも「別に急いでしなくてもいいんじゃない?」と言う。
そんなソウちゃんは仕事が忙しくて、普通の店に就職してたならまだ見習いでシャンプーとお掃除ばかりらしいけど、「実践」を兼ねてもうお客さんの髪を切っているらしい。
ソウちゃんのお家の美容室はお父さんと従業員の若い男性と2人でやっている小さなお店だけど、以前、『穴場の店』として雑誌に紹介された事があるらしく、住宅街にあるのに割りと混んでいる。
だから見習いなんて通り越していきなり実践から入ってるらいいけど、休みに会うソウちゃんはちょっと疲れた顔をしている事が多い。
少し寂しいけど、ソウちゃんの身体が慣れるまでは「会いたい」ってあんまり言わないようにしている。
なかなか会えない時はお互い「手紙」を書いて、あたしはソウちゃんからもらう手紙に励まされている。
そんな生活も1年半が過ぎた頃・・・。
まさかこんな事になるとは思わなかった。