大きな鏡を見ながら呟いた。


「これってパッツン前髪ってより直線じゃない?」


「うーん、やっぱり?長めに切っといてよかった。直してもらえるし」


そう言うと、ソウちゃんパパが出て来てあたしの前髪を見るや


「酷いな・・・」


と苦笑いして、ハサミを出して直し始めた。



明日、あたし達は高校を卒業する。


あたしも希望通りにK女子美大に合格して、ソウちゃんも美容の専門学校へ推薦で決まった。

明日香も当たり前に彼氏がいる大学に合格し、必死で頑張った幹太くんだけが希望の大学に受からなかった。

でも、ミサちゃんの大学の近所の大学に合格したからそれぞれ一応は進学する事になった。


卒業式の前に髪を切ろうと思ってソウちゃんパパのお店に来たら、ソウちゃんが「実践したい」と言い出して、とりあえず前髪を少しだけって事で切ってもらったらこの結果。


「ソウちゃん、不器用なんじゃない?美容師さんになれるの?」


「オレ、不器用じゃねーよ。人の髪なんて切った事ないからさ、最初はこんなもんだろ?」


あっけらかんと笑っているけど、あたしはちょっと不安。


「これからもあたしが実験台になるのかな・・・」


「そうだな!でもルウコはロングで黒髪が似合うからちょっと切るだけだよ」


益々不安になってため息が出た。