「だよね・・・。あたしさ、好きな人がいるんだよね」
「あー、笹井先生が言ってた子かな?救急車に一緒に乗って来た子。彼氏?」
頷くと「良かったね」とまたニッコリ笑った。
「でもさ、ウチの親が反対してるんだ。ってよりウチの親自体があたしが生きる事を諦めてる気がする」
「まぁ、ルウコちゃんのご両親は少しナーバスになりすぎてる気はしてたけど・・・。誰も自分の子供の人生を諦めるワケないでしょ?考え過ぎ」
「そうかなー」
布団を掛け直すと、ベッドの隅に藤田さんが座った。
「彼は?」
「え?」
「彼は諦めてなんかないでしょ?誰かの為に生きたいって彼の為なんでしょ?」
「うん」
「だったらそれでいいんじゃない?生きる目標は大事なんだから」
「そんなもん?」
「だってルウコちゃんはまだ17歳でしょ?まだ子供なんだから、親だって心配はするし、彼は親にとっては他人なんだから他人の子供さんに負担をかけさせたくないって思ってるだけよ。ちゃんと誠実に向き合えばわかってくれるから」
水と薬を渡されて、飲み干すと「はい、お休み!」と立ち上がった。
出て行こうとする藤田さんに
「ウチの親もわかってくれると思う?」
と聞くと「親なんだから当たり前」と返された。
少しだけ、お父さんとお母さんに心を開いてみようかな?
藤田さんの顔を見ながら思った。