気まずいままお父さんが帰って、なかなか寝付けなかった。
ナースコールを押して「眠れない」と言うと、看護士が来た。
「あ、夜勤なんてやるんだ」
看護士はあたしが昔からよく知ってる看護士長の藤田さん。
「そうよー、もう子供も大きくなったから夜勤に入るようになったの」
血圧と体温を計りながら笑顔で言った。
「ふーん。もうそんなに経つんだね・・・」
「ルウコちゃんが入院して4年以上経つんだから。あっという間よね」
初めて入院した時、随分と文句を言って困らせたのがこの藤田さん。
「そう言えばさ、発作で苦しい時に『もう殺して!』って蹴っ飛ばした事あったよね、あたし」
「あははは、あったあった。こんな気の強い子が心臓悪いの?って疑ったもの。まぁ、私も『クソガキ!』って怒り返したけど」
「そうだよ、何て口が悪い看護士だろうって思ったもん」
「それはお互い様です」
久々に会った藤田さんに重かった気持ちが少し軽くなった。
「睡眠薬出そうか」
トレーの上から薬を出してPCで打ち込んでいる。
「藤田さん」あたしが呼ぶと笑顔のまま振り返った。
「生きていたいって・・・、こんな身体だけど誰かの為に生きてたいって思うのって変?」
あたしの疑問にあっけらかんと答えた。
「あら、当たり前じゃない。誰でも生きてたいんだから」