「彼氏って・・・、前に言ってた子?」
「ですね」
「ですねって・・・。ルウコ、まだ付き合ってるのか?病院に運んでくれたって事は彼は病気の事知ってるのか?」
「知ってるよ。知識もちゃんとある。だから対応早かったし助かったんじゃない」
「いやいや、お父さんは反対だ。いくら知識があるからって実際は大変なんだぞ?知識があるだけじゃダメだ」
「ふーん、大変なんだ。そうよね、あたし家族のお荷物だし」
「ルウコ!」
怒鳴るお父さんをあたしは冷ややかに見た。
「何?違うって言いたいの?やめてよね。わかってるんだよね、何かわざとらしいし、何でも『思いで作り』?そんな感じでいつあたしが死んでもいいようにしてるじゃない。違う?」
お父さんは悲しそうな顔であたしを見ている。
「だから、そういう哀れんだ顔とかが腹立つんだって。少なくともソウちゃんはそんな顔しないし、普通に接してくれてるよ?ソウちゃんのご家族も同じ。異常だよ、ウチは」
「異常って・・・それは病気の家族を抱えてるとみんなそうなるからだ」
「ほら、やっぱりお荷物じゃん。お父さん達は死んだ後の事を考えた思い出作りの家族ごっこしてるかもしれないけど、あたしは違うからね。生きていたいの。死ぬ気なんてないから。ソウちゃんもあたしが死ぬなんて思ってないからね」
お父さんはそれ以上何も言わなかった。
言われたところで全て嘘くさい、ウチの親の言葉なんて全部そう。
「彼もルウコも何もわかってないんだよ・・・」
やっと絞り出した言葉も安っぽい。
娘に救いの言葉すら言えないなんてどうかしている。
「わかってないのはお父さんとお母さんだよ」
あたしも小声で呟いた。