「ソウってね、いつもぼんやりしていて・・・、何考えてるか息子なのによくわからない子なの。何の目標もなさそうだし、つまらなそうな顔をいつもしている子なんだけどね。・・・でも、最近ちょっと変わったかな?って思ってね、それはルウコちゃんがいるからかな?って思ったのよ」
「あたし・・・ですか?」
あたしがソウちゃんに影響をもたらしているとしたら「悪影響」だと思っていた。
苦しませてるだけだって思っていた。
「ソウのお付き合いしている子が、多分病気か何かじゃないのかな?って何となくは気づいていたの。前に本なんてロクに読まないのに、分厚い医学書買ってきて真剣に読んでいたりしたから」
あたしの知らないところでソウちゃんはあたしの病気をすごく考えてるんだ・・・
あたしさえいなければ医学書なんて読む必要ないのに。
『普通の女の子』と付き合っていればソウちゃんは楽だったんだと思う。
そう考えると自然に手元に視線が行く。
悔しくてギュッと拳を握った。
『普通になりたい』
そう願わずにはいられない。無理だとわかっていても・・・
「下を向く事なんて何もないのよ。ソウがちゃんとしっかり何かを考えたり悩んだり、そうやって真剣に思える事が大事なんだから」
ソウちゃんのお母さんの優しい声が続いている。
そっとソウちゃんを見ると何だか困った顔をしている。
こんな顔をさせているのはあたし。
何かを考えたり悩んだり、真剣に思える事が大事。
その言葉は本当にその通りなんだけど、あたしの事じゃなくて、
後1年半しかない高校生活を楽しんだ後で進路に悩んだり、自分がやりたい事を探したり、そういう事に「真剣さ」を使えばいい。
あたし何かの為に使わないで・・・