当日、明日香のオススメのペンションの部屋に荷物を置くと、「疲れた」とソウちゃんはソファーにドサっと座った。
電車で1時間ちょっとの隣の市にあるこのペンションは見晴らしがすごくいい。
でも長い坂道が続いていて、途中まで頑張ったけど「ギブ!!」ってソウちゃんが弱音を吐いて、途中からタクシーで来た。
「サッカー部なのに体力ないのねー」
あたしが呆れて言うと、
「昨日、練習試合だったの!!だから朝からグッタリ」
とソファーでグターっとしている。
そんなソウちゃんはほっといて、隣の部屋の寝室に行くとダブルベッドが一つだけ。
自分で予約したんだからわかってはいるけどちょっとドキドキした。
(やる気満々なのは事実だけど・・・あたし変態かも)
顔が赤くなるのをどうにかしようと大きな窓を開けた。
「わぁ・・・キレイ・・・」
窓からの景色は坂道の下に街が見えてその向こうには海が広がっている。
夜景が売りだから夜はもっと素敵なんだと思う。
建物も建築100年の古い洋館を改築しているから何だか昔にタイムスリップした気分になる。螺旋階段とか。
「ソウちゃん!こっちに来てー」
声を掛けると「どうした?」とソウちゃんが寝室に入ってきた。
そして窓の外を指差すあたしを見ないで部屋に入った瞬間にギョッとした顔になる。
「ソウちゃん?」
「ルウコ!!ベッドがない!!」
ベッドを指差しながらわけのわからない事を言っている。