うそ、うそ、うそでしょ!?


達也くんに話し掛けられるなんて!!


パニックに陥ってしまうあたし。


見兼ねた達也くんが、
あわてて頭を下げた。


「す、すいません!急に呼び止めたりして!」


そんなっ、びっくりしたけど
謝るほどのことじゃないよ!

っていうか、普通に嬉しかったし……。


大丈夫、
と顔を上げるように言うと、
達也くんはホッとしたように笑った。



「実は…あなたに話があって」






話?
まさか告白……!?

いやいやいや、まさかね!


だってさ、
達也くんと一回も
話したこととかないし。


達也くんはあたしのことなんて
全然知らないと思うし。


お互いバスで顔を合わせる程度の仲なのであって……。



……一目惚れ?



いや、ないって!!
あたし一目惚れされるような美貌の持ち主じゃないもん!

むしろ一目見たら吐き気をもよおすようなキモさだし……。


なんか…自分で言って、
悲しくなってきた。



と、とにかく!
達也くんの話を聞いてみよう!






自分を必死で落ち着かせて、


「は、話というのは…?」


思い切って話を切り出した。


今となってはこれがいけなかったんだと思う。


やっぱり達也くんは、
毎朝会うただの憧れの人。


何も知らないままで
“綺麗”なままに
しておくべきだったんだ。



「あの……あなたがいつも一緒にいる友達の名前、教えてもらえませんか?」



え──…



あたしがいつも一緒にいる“友達”……?






「俺、あなたの友達に一目惚れしちゃったんです!あの人の名前だけでも教えてもらえませんか?」


目の前には、真っ赤な顔で必死にお願いする達也くん。


あたしの頭の中には、ナツの顔。


働かない頭をフル活動させて、
あたしは達也くんの言葉の意味をひとつひとつ理解していく。


そして、やっとわかった。



ああ……あたしは、告白もできないまま振られたんだ……。



あたしの憧れの達也くん。


いつのまに、
あたしはこんなにも、彼のことを好きになっていたんだろ。



突き刺さるように胸が痛いのが、それを物語っている。






悔しかったから、
あたしはずるいことを言った。


「でも、その子……彼氏いるよ」


事実。うそじゃないけど。

これは達也くんを傷つける真実。


でも達也くんは動じなかった。



「それでも好きなんです!」



──何で。
そこで落ち込んでくれれば、
あたしも少しは楽だったのに。


「……わかった。じゃあ、あなたの名前、先に教えて」


「はい!須藤快(スドウ カイ)、1年です」



初めて知った、彼の名前と学年。
あたしよりもひとつ年下。


こんな形で知りたくなかったけど、



「快くん。頑張ってね」



初めてあなたの名前を呼べて、
本当に嬉しかった。








『君とバスで』


-----BAD END.


あとがき⇒22ページへ








うそ、うそ、うそでしょ!?


達也くんに話し掛けられるなんて!!


パニックに陥ってしまうあたし。


見兼ねた達也くんが、
あわてて頭を下げた。


「す、すいません!急に呼び止めたりして!」


そんなっ、びっくりしたけど
謝るほどのことじゃないよ!

っていうか、普通に嬉しかったし……。


大丈夫、
と顔を上げるように言うと、
達也くんはホッとしたように笑った。



「実は…あなたに話があって」






あたしは一体、どうすればいいんだ!?


ずっとひそかに想いを寄せていた
憧れのあの人から、



『話があります』!!?



まさか、こ、こく……

……いや、やめておこう。


違った時、異常に恥ずかしい思いをすることが目に見えてるから、そんな期待をもつのはやめよう。


だって、1回も話したことなんてないんだもん。

お互いの名前も知らないんだもん。

こんなドブスのあたしが、一目惚れなんてされるわけないもん。


期待したぶん損して、悲しくなっちゃうだけ。


淡い期待は、心の底に押し沈めたほうが身のため。






なるべく平静を装って、


「話というのは何ですか?」


告白じゃなかったとしても、
雲の上のような存在だった達也くんと話せたことを喜ぼう。



「実は……あなたのことが」



あ、あたしが?
何?お願い、早く言って!


心臓がもたないよー!!



あー、ダメ。
気持ち悪くなってきた……。


周りの景色は歪んで見える。



ああ……達也くん……。