グラウンドで野球部の誰かが監督に大きな声で怒鳴られているのが聞こえる。
そんなことと全く関係なく、図書室は相変わらず静かだ。
私と早瀬君の小さな声の会話が途切れたら、時計の秒針の音しか聞こえなくなる。
本を這う小虫の足音さえも聞こえてきそうだ。
今となっては、何だそんなこと、と思われるようなこと。
でもあの頃は、本当に恥ずかしかった。
今、こうしてあの頃の話をしているのが不思議なくらい。
元カレ、と言ってしまうにはあまりにも接点が無く、逆に遠ざかっていた早瀬君。
その人とこんなふうに思い出話ができるようになったなんて。
普通にクラスメイトとして話をしているなんて。
ある意味、大人になったのかな……。