やっぱり、私、これが落ちつく……。
この穏やかな空気。
張り詰めた静けさの中に在る、落ちついた雰囲気。
図書室が生むものか、早瀬君が生むものか分からないけれど、私はこの空気と時間の流れが好きなんだと、改めて実感した。
「おでこ……」
早瀬君が私を笑いながら見て、右手の真ん中3本の指で、私の額を軽くピシッと叩いた。
「可愛いね」
「……」
わっ……。
ドキン、なんてありきたりな表現じゃ言い表せないほど、私の胸は高鳴った。
昨日、高田君から言われた『可愛い』とはケタ違いのその言葉の威力。
私は期待はしていたものの、嬉し過ぎて一瞬クラッとしてしまった。
「あ、あり、っあり……」
「ありがとう?」
「う、あ……、うん」
前にもあったようなやり取りに、フッと笑う早瀬君。
「本音だよ」
そう言って、パイプ椅子に体重をかけて、また、ギッという音を響かせた。