ハウエブァー、と、唇を大げさにめくりながら、先生は言った。
一時間目は、英語の授業。
新しく出没した単語は、教科書の下に載っていて、次々増えるそれを、わたしたちは覚えなければならない。
「howeverは、『しかし』という意味です」
強い筆圧で黒板にチョークを押しつけながら、先生が説明する。
チョークの頭が、チリチリと削られて痛そうだ。ただでさえ、むき出しのハゲ頭なのに。
ハゲ頭がさらにハゲたら、いったいなにになるんだろう。ツルツルハゲ?ピカピカハゲ?鏡みたいになるのだろうか。
でも、かわいそう。鏡になったって、ほかの人をうつすだけで、自分では使えないのに。
黒板を見る。however。しかし。
シャーペンを手にかまえながら、首をかしげる。
しかしって、butじゃなかったっけ。一緒の意味なのに、二つ単語があるの?なんで?使い方に、ちがいがあるのだろうか。
質問したいけれど、いま手を挙げて聞くのは、ムリ。クラスのみんなから、『はりきってる優等生』の称号を与えられるなんて、まっぴらだ。
だから、わたしの左手の位置は、ヒザの上のまま。おとなしい、良犬の、わたしの左手。
先生は、わたしたちにノートを開かせると、大きな声で言った。