手にしていた携帯が突然震えだし、着信を知らせるメロディーが流れ始めた。
しかも驚くことに、電話をかけてきたのはアキちゃん。
おろおろしながらも、慌てて電話に出ると、アキちゃんの明るい声に迎えられた。
〈あ!香波ー?久しぶり!元気ー?〉
「は、はい!お久しぶりです、元気です!」
夏休みに入ってからアキちゃんとは全然会ってなかったけど、アキちゃんは変わらず私を名前で呼んでくれた。
友達なんだなって……思わず嬉しくなる。
〈今、電話へーき?〉
「う、うんっ。どうしたの?」
〈あのね、実はクラスのみんなと話してたんだけど、文化祭のクラスの出し物、夏休み中からちょこちょこと準備し始めようと思ってるんだ。で、明日みんなで学校に集まる予定なんだけど、文実委員の集まりがなかったら相沢くんと香波にも来て欲しくって連絡したの!ふたりとも明日暇ー?〉
アキちゃんに聞かれて、私はバッグの中からスケジュール帳を引っ張り出す。
文実委員の集まりがある日はオレンジ色のペンで印を付けてるんだけど、明日の欄にそれはない。
「明日は文実委員のほうはないよ」
〈まじー?じゃあ、香波たちも来てよ!場所は1の2の教室ね!〉
「うん、わかりました」
アキちゃんの言葉に頷きながら、開いたままのスケジュール帳の明日のところに、オレンジ色のペンで印ではなく、“クラスのほうの準備”と書いた。
だから、次のアキちゃんの言葉を聞き逃しそうになってしまった。