私と野川先輩を重ねて、それであの日相沢くんはアドバイスしてくれて、それで逃げ出した私の代わりに仕事を片付けてくれたの?


そうなのかな……。いや、絶対そうだ。
だって、私みたいな地味な人間に関わろうとする人なんてそういない。名前を覚えてくれてたのだって、野川先輩と似てたからだったのかも。


なんだ……そうなんだ……。


「桜さん?」


「えっ!?」


野川先輩に突然声をかけられて、はっと我に返る。


「どうしたの?ぼーっとして」


「い、いえ!な、何でもないです!」


心配そうに顔を覗き込まれたので、慌ててぶんぶんと首を横に振った。


「ごめんね、急に変なこと話しちゃって」


「あ、いえ……」


野川先輩の顔が見られない。
何でだろう、すごく自分の心に嫌な気持ちが広がっていく感じ。


「……う、上手くいくように応援してます」


「ありがとう。まあ、まずは委員長として、文化祭を成功させることだけを考えないと」


そう言って、気合いを入れる野川先輩がまぶしくて、私は思わず先輩から逃げるように背を向けた。


「じゃあ、私はこれで……」


軽く頭を下げて、私は走り出す。
じゃあね、と手を振ってくれた先輩のことを見向きもしないで。


私、どうしてこんなにもやもやしてるの?
これが、柏木くんの言ってた嫉妬というものなの?


こんなに苦しくなるなんて……。



「人を好きになるのって、大変なんですね……」