言葉の意味は理解できたのに、何故か声を発することができない。
なんて返せばいいのか、わからない。
「そ、うなんですか……」
それだけ言うのがやっとだった。
私だって、相沢くんのこと好きだけど……。
野川先輩みたいに完璧な人に、勝てるわけが無い。
「あの……野川先輩は、相沢くんの、どういうところが好きなんですか……?」
何で、こんなことを聞いてしまったのだろう。
聞いたって意味はないのに。
きっと、ただ負けたくなかったんだと思う。
私のほうが、相沢くんの素敵なところをいっぱい知ってるって。
でも、聞かなければ良かったと、このあとひどく後悔した。
「私ね、中学の時、サッカー部のマネージャーをやってたの。相沢くんも部員だったのね。
でもね私、その頃はすごい口下手で今みたいにはっきりと物申すことができる性格じゃなくて。だから他のマネージャーから、面倒な仕事を押し付けられてばっかりだったんだ」
「え……野川先輩が……?」
「そうよ。今の私からは想像もつかないでしょ」
そう言って、ふふっと笑う野川先輩。
野川先輩はいつもしっかりしてて、みんなの前でびしっと意見を言える人。そんな先輩が、昔は私みたいな性格だったなんて……。
あれ……?私と似てる、私と……同じ……?