「ええ。まだちょっと作業残ってるから、それ終わらせとこうと思ってね」
「あ……じゃあ私も手伝います」
手に持っていた鞄を降ろして、再び先輩のもとへ駆け寄る。
「大丈夫よ。すぐ終わるし」
「ふたりでやったほうがもっと早く終わりますよ!」
遠慮してほしくなくてとっさに言うと、野川先輩は少し困ったように笑った。
「ありがと。じゃあお願いしてもいいかな?」
「もちろんです!」
残っていた作業というのはほんとに簡単なもので、不器用な私でもこと足りるほどだった。
すぐに終わったものの、外は鮮やかなオレンジから徐々に黒へと変わりはじめていた。
「ありがとね。桜さんが代わりにやってくれたおかげで、その間に片付けも明日の準備までできちゃった」
「いえ、お役に立てたならうれしいです」
こんなに素敵な人の役に立てたなら、遅くまで残ったかいがあるというものだ。
「じゃあそろそろ帰りましょうか」
「はい!」