「柏木くん、探すの手伝ってくれてありがとうございました」


「どういたしまして!」


柏木くんと一緒に教室に戻ってくると、相沢くんが目を丸くしてこっちを見ていた。


そして、柏木くんから引き離すように私の手を引いて、教室の隅っこに連れていく。


「相沢くん、どうしたの?」


「どうしたの、じゃねーよ。何で柏木と仲良く戻ってきてんだよ」


「美術道具探すの手伝ってくれたんです」


「……そういうことを聞いてんじゃないの」


どうしたんだろ、相沢くん。


怒ったり呆れたり、ころころと表情が変わってなんだかおもしろい。


「柏木に何か変なことされなかったか?」


「あ、それは大丈夫です!」


むしろ謝られたし。


相沢くん、もしかして私のこと心配してくれたのかな。だとしたら嬉しいな。


私が笑うと、「ならよかった」って安堵してるから、ちょっとくらい自惚れてもいいよね。


「そこ!早く手伝って!ここ今日中に終わらせるからね!」


「は、はい!」


野川先輩に促され、私と相沢くんは慌ててアーチの制作作業に加わった。


「香波ちゃーん!一緒にこっちでやろーよー!」


遠くで柏木くんが手を振りながら私を呼んだけど、私よりも先に相沢くんが勝手に「行かねーよ」と応えてしまった。


相沢くんが何で柏木くんにガンを飛ばしているのはわからないけど、相沢くんと一緒に作業できるのは嬉しかったから、まあいっか……。