「香波ちゃんと二人きりになりたかったからだよ」



「え……」



澄んだ瞳が、私をまっすぐに捕えて離さない。


恥ずかしくなって顔を背けようとしたけど、柏木くんがそれを許してくれなかった。


私との距離を詰め、そして左頬に右手を添えられる。


「顔、真っ赤だよ? 緊張してんの?」


緊張も何も、状況が理解できなくてリアクションを起こすこともできない。


さっき、家の塀に追い込まれた時と同じ。
今はただ妖しく、企むような笑顔しかない柏木くん。


少し……怖い感じがした。



「ねぇ、キスしていい?」



そう聞かれた時には、私の右手に柏木くんの左手が重なっていた。


初めて知った。


男の子の手って、おっきくてあったかい……。


って、そうじゃなくて!



「きき、き……す……!!?」



キスってあの、愛する者同士がお互いの唇を接触させるあの!?


「うん。そう」


「お、おお、おっしゃってる意味がわからないのですが……!!」


思考回路が完全にショートしてしまった。
頭が真っ白になるとは、まさしくこのことかもしれない。