「香波ちゃんさ、相沢が野川さんに連れてかれて、あんま良い気分ではないでしょ?嫉妬したんじゃないの?」
「そんなこと……」
確かに、さっき野川先輩と相沢君が話してるところを見た時は、少し2人のことが気になった。
でも、嫉妬なんてそんな……。
もしかして、あのチクリとした感じと、渦巻いた変な気持ちが嫉妬なの……?
「香波ちゃん」
私の思考を遮るように優しく声をかけられたかと思えば、柏木くんは家の塀に手をついて、私の行く手をふさいだ。
「? 柏木くん……?」
「俺さ、君のこと気に入っちゃったんだよね」
「“気に入った”……?」
意味がわからず、首を傾げていると、柏木くんは私の耳元で囁いた。
「絶対俺のものにするから、覚悟しといてよ」
俺の……“もの”!?
“もの”って何!?
というか、柏木くん、お顔が近いのですが……!
恥ずかしさと、わけのわからない言葉のせいで、私の頭はついていかない。私が理解できる許容範囲を超えてしまっている。
「じゃあ行こっか」
私を通せんぼしていた柏木くんは、そう言って何事もなかったかのように歩き出す。
……このまま柏木くんと一緒に買い出し行って大丈夫なのでしょうか?
何だかいろいろと、大変なことになりそうな悪い予感しかしないのですが……!
本能的な自己防衛反応が生じたけど、文実委員として買い物をしている以上、私は逃げることもできなかった。