「それでは文実委員会を始めます」
結局、相沢くんは来ないまま、委員会が始まってしまった。
「えーと、いないのは……1年2組の相沢くんかしら?桜さん、何か聞いてない?」
「い、いえ……何も……」
野川先輩は「そっか」と困ったように笑うと、しっかりとした声で号令をかけた。
相沢くん、今日はどうしたのかな?
委員会中寝てるのは毎度のことだけど、遅刻なんて珍しい。
寝坊しちゃったのかな……?
他のクラスの委員の人とは何度か顔を合わせてるから話せなくはないけど、1人では少し不安になる。
相沢くんにそばにいてほしい。
早く、来てくれないかなぁ……。
「それでは、今日の作業について説明したいと思います。まず、材料など足りないものが多いので、1年生には買い出しに行ってもらいます。2年生は……」
「遅れてすいませんでした!!」
野川先輩の話の途中で、教室の扉が勢いよく開き、相沢君が飛び込んできた。
「相沢君、早く着席してください。明日からは遅刻しないように」
「はい、すんませんでした」
軽く頭を下げてから、相沢君は私の隣の席につく。
「お、おはよ。相沢くんっ」
「よぉ、香波。遅れて悪かったな」
「ううん、大丈夫です」
相沢くんが隣にいるだけで、さっきまで不安だった気持ちがスーッとなくなっていく。
だけど、代わりに、さっきまではなかった心臓のドキドキがやってくる。
そのことで、やっぱり私は相沢くんのことが好きなんだと改めて実感した。