その日の夜。
夕飯を食べ終わると、私はすぐに自分の部屋に戻って、携帯を開いた。
電話帳の一番上にある、その名前を見つめること数分。
いまだに電話にしようかメールにしようか悩んでいて、その先の作業へと進めない。
相沢くんに、今日友達ができたことを伝えたかった。
私に変わるきっかけをくれて、助けてくれてたから、やっと私にも友達ができたよって報告したい。
どうせなら直接話したいんだけど、明日は土曜日だから学校は休み。
だからせめて電話にしようかなと思ったんだけど、忙しいかもしれないと思うと無難なメールのほうがいいかなとも思う。
うーん、メールのほうがいつでも見れるから迷惑かからなくていいよね。たいした用事じゃないんだし。
そう思い、メール作成画面を開き、本文を打ち込む。
【相沢くん、報告があります。
わたし初めての友達ができました!】
「……」
やっぱり、きちんと話したい。
私は途中まで入力した文字を全部消し、電話をかけた。
プルルルルル…
電話は苦手だけど、かける相手が相沢くんだからか、不思議と緊張はない。
していないはずだけど、何故か心臓はドキドキと跳ねている。
3コール目が鳴り終わると、心地の良い低い声が聞こえた。
〈もしもし?香波?〉