山田さん、いっつも授業中寝てるもんね。
苦労してるんだろうなぁ……。


バッグに課題のプリントを詰め込む山田さんをぼんやり見つめていたのもつかの間、さっきの山田さんの言葉を思い出して、私は自分の顔が熱くなるのを感じた。


「ととと、というか山田さん!? さっきのはどういう……!というか、見ていらっしゃったのですか!?」


「ん、見てたよー。素晴らしく微笑ましい光景でしたなぁ」


毛先を巻いた綺麗な髪を揺らして、山田さんはうんうんと頷く。


たちまち耳まで真っ赤になってしまった私を見て、山田さんは楽しそうにけらけらと笑った。


「あ、あのっ……山田さん……?」


「ふふ、桜さん可愛いなぁ、もう!」


「……?」


か、可愛いなんて、初めて言われた……。
というか、私に普通に話してくれる女の子、山田さんが初めてだ……。


「あっ!桜さん!」


そんなことを考えていると、教室に同じクラスの男子が慌てた様子で飛び込んできた。


「ちょうど良かった!ちょっと頼みたいことあるんだけどいい?」


「えっ……う、うん……」


断りなさいよ、私……!
と、自分で自分を叱っていると。



「ダーメ!桜さんはこれからあたしと遊びに行くの!」



そう言って私の右腕に抱きつく山田さん。


「あ、そうなの?ごめん……」


いや、あの?そんな約束してないような……?


状況が理解できない私を引きずりだすようにして、山田さんはそのまま私を教室をあとにした。