私の肩に伸ばされた手はすぐに引っ込められる。
「ついてたよ」と言われて相沢くんが私に見せたのはほこりのような何かのごみ。
ああ……ゴミを取ってくれたんですね……。
「すいません、ありがとうございます……」
勝手にどきどきした自分が恥ずかしい。
「じゃあまた明日な。気をつけて帰れよ」
火照った顔を隠すように俯きながら、エナメルバッグを持って教室を出ていく相沢くんに小さく手を振り見送った。
「はぁ……」
最近の私は変だ。
相沢くんは初めて私とちゃんと話してくれた人。
サボってばかりで不良というイメージがあったから近寄りがたかったけど、実はちゃんとした人で、優しいところもいっぱいある。
一緒に文化祭を盛り上げていくためのパートナーだとも思っている。
はじめは男の子と話したことがなかったから緊張もしていたんだけど、それにももうだいぶ慣れた。
はずなのに。
最近は前よりも、相沢くんと一緒にいるだけでよりいっそう心臓がうるさくなってる気がする。
「どうしたんだろう、私……」
「それはやはり、恋じゃないですか?」
誰も居なくなったはずの教室に、可愛らしい声が響いた。