「桜さん?どうしたの、急に黙り込んで?」


ひらひらと目の前で相沢くんが右手を振り、それで私はやっと我に返った。


「あ……いえ!何でもないですっ」


「ぼーっとしてたけど、具合でも悪いのか?」


「大丈夫です。全然、何ともないので……」


変なの、私。


何で、あんなこと思ったんだろう。


相沢くんと、もっと仲良くなりたい、なんて……。


確かに最初は友達とかそういう存在が欲しかったけど、今更になるともうそんなのどうでも良くなった。
ひとりで教室にいると、やっぱりどうしたって浮いてしまうけど、たいして他人と親密になろうとも思わなかったからそれで良かった。


そうだった、はずなのに。



「初めて、私とちゃんと話してくれた人だからかなぁ……」



じゃあもう帰るね、と楽しげに別れを交わしている相沢くんと野川先輩。


私の小さなつぶやきに気づくことはなく、野川先輩が「文化祭頑張ってね」と私にも大きく手を振りながら帰っていった。