立ち入り禁止の場所に足を踏み入れる勇気なんて、この私にはない。
でも、先生に頼まれてしまった以上、私はきちんと相沢くんを教室に連れて行かなくてはならない。
先生は、私を信じて頼んでくれたんだから!
きっと自分が呼びに行くのは面倒だから私に行かせたんだろうけど、なんていう考えは頭から振り払った。
立ち入り禁止のテープをまたぎ、コンコン、ととりあえず2回ノックをしてみる。
そして、大きくて重い両扉を開けた。
「相沢くん……いますか……?」
そーっと開けて、そーっと覗き込んでみると、相沢くんの後ろ姿が見えた。
「あ、相沢くん……」
呼びかけてみたけど、相沢くんは気づいてくれない。
先生に頼まれたとはいえ、立ち入り禁止の屋上に入るのは少し気が引ける。
とはいえ、連れていかないと私が先生に怒られるんだから仕方ない。
「しし、失礼、しまぁす……」
そーっと足を踏み入れて、すぐに立ち止まった。
「相沢く――」
あれ、誰だろう……。
相沢くんと一緒にいる女の子……。
あの相沢くんがすごく楽しそうで、仲が良さそうに話してたから、私は入っていくことができなくて。
そのまま屋上をあとにした――。