「もういいですよ!式にも出ないろくでもない人間だって先生に伝えてきます!」


目に涙をためているものの、どうやら桜さんは怒っているらしく、今にも「むきーっ!」とか言い出しそうな勢いで言う。
さっきまでのおとなしそうにびくびくしていた彼女はどこへ行ったんだ。


「入学式早々からこんな役回りでほんっと最悪ですよ!相沢くんは入学式に出ても出なくてもどっちでもいいかもしれないけど、連れ戻せなかったら私が先生に怒られるんですからね!それでもサボるのであればどうぞご勝手に!!」


こいつの変貌ぶりに俺はただただ目を丸くしかない。


いつも穏やかそうな奴がまじでキレると怖いとかよく言うけど、桜さんはまさしくそのタイプだと思った。


「それではこれで失礼します!お昼寝の邪魔してすみませんでした!」


最後まで俺にキッと強い目を向けて、でも律儀に頭は下げて、桜さんは走って行ってしまった。


俺はしばらく呆然としたあと、さっきの彼女の言葉を思い出す。


確かに、高校に入学してすぐ、こんな問題児に振り回されるなんて嫌だろうな。あいつも可哀想な奴だせ。


でも、それを本人に言うとはすげーな。


桜香波……見た目は弱そうだけど、ある意味大物だぜ。