「じゃあ、俺行くから」
柏木くんが宣伝用の看板をクラスの人に渡して教室を出る。
「あのっ、柏木くん!」
「ん?」
何かエールになるようなことを、と思って慌てて呼び止めたけど、結局普通なことしか言えなかった。
「頑張ってください。その、私も頑張るから……」
その言葉を聞いただけで柏木くんはすべてがわかったのか、私の肩をポンポンと叩いてくれる。それから満面の笑顔で……。
「おう!香波ちゃんなら絶対大丈夫だよ!」
私を勇気づけてくれた柏木くん。
「お互い頑張ろうぜ」と残して、元気良く会場へと走って行った。
「あいつ、まさかコンテスト中に告ったりしねーよなぁ?」
「でも、それならそれで素敵ですよね」
苦笑する相沢くんに、私も笑い返す。
すると、思い出したように相沢くんが「あっ」と声を上げた。
「そういえば、『私も頑張るから』って香波言ってたけど、お前は何を頑張るんだ?あ、文実委員の仕事とか?」
――ドキッ。
確かに文実委員の仕事も最後まで頑張るつもりだけど、柏木くんに言ったのはそのことではない。
相沢くんに、自分の気持ちを頑張って伝えるんだ。
野川先輩に想いを伝えようとまっすぐな柏木くんに勇気をもらったから、きっと大丈夫。ちゃんと言える。
ありがとう、柏木くん。
「あ、あのね、相沢くん。お話したいことがあるので、人がいないところに行きませんか」