「あー、食った食った」


「美味しかったですね」


カレー屋さんを出て、これからどこに行こうかと文化祭のパンフレットを2人で覗き込む。


肩が少し触れる距離にドキドキして、私は行き先を決めるどころではない。


するとその時。


「かーなーみーちゃーん!」


ぶんぶんと手を振りながら元気にやってきたのは、柏木くん。


宣伝中なのか、クラスの出し物の看板を手にしている。


「柏木くん、こんにちは」


「やっほー!そっちの当番は終わったの?って、左手どうしたの!?」


「あ……まあいろいろありまして。でも大丈夫だよ」


柏木くんは心底心配そうな表情で「ほんとに痛くない?大丈夫?」と、私の左手に自分の右手を添えながら聞いてくる。


すると、相沢くんが柏木くんの首根っこを掴んで私から離れるように言った。


「何だよ、お前!香波ちゃんと俺はマブダチなんだから……って、お前誰?」


柏木くんは相沢くんを指さして、目を見開いている。


「も、もしかして……相沢?」


「……ああ、そうだよ」


思いきり嫌そうな低いトーンで答える相沢くん。
それを聞いた柏木くんは、げらげらと笑い出した。