ゆっくりしてていいよ、と言われたけど。
みんなが働いている中、のんびりしているのも何だか心苦しい。
そう思った私は、結局家庭科室でお皿を用意したり、ゴミを捨てに行ったり、片手でもできる仕事をやっていた。
それでも時間が空いた時は、どこか回りに行ったりするわけではなく、スタッフルームで相沢くんの当番が終わるのを待っていた。
「いらっしゃいませ。こちらのお席へどうぞ」
相沢くんは少しでも女の子らしく振舞おうとしているのか、いつもよりも高い声でお客さんと接している。
スタッフルームでそれを聞きながら相沢くんの様子を想像していると何だか面白くて、ひとりで笑ってしまった。
そうしていると、次の当番の人たちがスタッフルームにやってきたので、私は一度教室を出る。
メイド服や執事服に着替えた人たちが相沢くんたちと交代していく。
「香波、お待たせ。着替えてくるから待ってて」
「えー!せっかくメイド服似合ってんだからそのまま行きなよー!」
「はあっ!?」
アキちゃんが現れて、相沢くんの肩をつつく。
確かに、メイドさん姿の相沢くんは本当に素敵だから、すぐに脱いでしまうのは少しもったいないような気もする。
「香波も、女の子と歩いてるって思えて緊張しないんじゃない?」
「え?あ、まあ、はい。でも……」