すごいなぁ、相沢くん……。


普段眠そうにして何も考えてなさそうなのに、ちゃんと自分なりの考えを持っていて。


授業さえサボらなければ本当にすごい人だなって思えるのに、なんてまた失礼なことを考えていたと見抜かれる前にやめておこう。


「じゃあ、また明日な」


「あっ……はい!ぶ、部活頑張ってくださいっ」


慌ててそう言うと、相沢くんは少し嬉しそうに笑った。


「サンキュー。桜さんも気をつけて帰れよ」


気をつけてって……もう夏だからまだそんなに暗くない。


だけど、その気遣いが嬉しかった。


今まで、みんな私の帰りが遅くなることなんて気にもとめずにいろんなことを頼んできてたから。
まあ、断れない自分が悪いんだけど。


これからは委員会で忙しくなることも多いし、何より私が断れなくて引き受けてしまうばっかりに文化祭の準備が遅れたら、相沢くんに迷惑をかけてしまう。


そう考えると、だんだんくじ引きで私が文実委員になったことは必然のように思えてきた。


変わるきっかけを、神様がくれたのかもしれない。


「頑張らなきゃ……」