ドンッと藤崎さんを突き飛ばした。
――バシャッ。
やかんの蓋が開いて、お湯は全部私の左手にかかってしまった。
「熱っ……!」
「桜さんっ!!」
沸騰したてのお湯が手にかかり、尋常じゃない痛みが左手に走る。
痛みでうずくまる私に、みんなが駆け寄ってきた。
「大丈夫!?」
「俺、先生呼んでくる!」
「とりあえず水で冷やそう!」
言われるまま水道水で手を冷やすけど、さらに痛みがやってくる。
痛みで顔を歪める私に、藤崎さんが言った。
「ごめん!ごめんね、桜さん!私のせいで……」
今にも泣き出しそうな藤崎さん。
「ち、違うよ……私が勝手に飛び出しただけだから……。藤崎さんは大丈夫でしたか……?」
私が問いかけると、藤崎さんはぶんぶんと首を横に振る。
それを見て、私は安堵の息をついた。
「良かったです……。藤崎さんは美術部だから……素敵な絵を描くその手を怪我しちゃダメですよ……」
「桜さん……」
熱い、痛い。
でも、藤崎さんに怪我がなくて本当によかった。
私も、人を助けられるようになったんだなぁ……。
そう思うと、なんだか嬉しくて、こんな状況だというのに不思議と笑顔になってしまう。
しばらくして担任の小川先生がやってきて、私は保健室へと連れていかれた。