すぐ近くの家庭科室で、私たちのクラスはお客さんに頼まれたものを用意してあるので、ご注文を受けたらそこまで取りに行くことになっています。


裏方組は、そこで材料が底をつくまでひたすらスイーツや飲み物やらを作っている。


「ホットケーキと、ホットコーヒーお願いします」


「はーい」


忙しくて注文がひっきりなしにやって来るからか、裏方組はものすごく忙しそう。


「ごめん、桜さん。ホットケーキ焼けるまでしばらくかかるから待っててもらっていい?」


「はい」


待ってるついでに、私も何か手伝おうかな。


執事役のはずの藤崎さんも、自分が受けた注文が出来上がるのを待つついでにホットケーキを作るのを手伝っているみたいだった。


「藤崎さん、私も何か出来ることないですか?」


「あ、じゃあ、そこのボール洗ってくれないかな?」


「はい。了解しました」


流し台にたまった洗い物をやろうと腕まくりをしていると、ピーッとコンロでお湯を沸かしていたやかんが鳴り始めた。


「お、沸いた沸いた」


そう言って藤崎さんが火を止め、お湯を注ぐためやかんに手を伸ばした時だった。


「あ、ごめんっ」


藤崎さんの後ろを通り過ぎた子が藤崎さんにぶつかってしまい、その拍子でバランスを崩した藤崎さんはやかんを倒してしまった。


その瞬間、中に入っているお湯がこぼれて藤崎さんの手にかかりそうになったのを見た私は……。


「あぶないっ!」