「香波」
すると、相沢くんに後ろから耳元で名前を呼ばれた。
「!? あ、相沢く……」
突然のことに心臓が跳ね上がり、顔が熱くなる。
「香波」
「は、はいっ!?」
思わず声が裏返るほどドキドキしている私に構うことなく、相沢くんは低く、でも優しく言った。
「今日のお前、すげー可愛い」
……。
……、か、か、かわ、いい……!?
褒められたのは素直にすごく嬉しいんだけど、可愛いなんて言われ慣れていない言葉を、好きな人にしかも耳元で囁かれたものだから私はもう顔から火が出そう。
なんなら、目眩まで起こして倒れそうなぐらいです。
当の相沢くんはそれだけ言うと、何故か満足げに微笑んで、それから何もなかったかのような堂々たる態度で体育館の2階へ上がっていった。
お、おそるべし相沢浩也……!
こっちはドキドキしすぎて死にそうになっているというのに!
でも、本当に嬉しかった。
アキちゃんには感謝してもしきれない。
明日は、いよいよ相沢くんに告白する日だし、頑張って自分でアレンジしていこう。
私はぐっと拳を握り締めて気合を入れ、相沢くんの後を追って開会式の準備を進めた。