チュンチュンと、鳥のさえずりが聞こえる。
それから、カーテンの隙間から入り込む朝日。


それらによって朝がきたことを知り、私は目覚まし時計より早く起きた。


制服に着替えて、リビングへと降りる。


「おはよう、お母さん」


「香波おはよう!今日から文化祭ね!明日はお母さんとお父さんも行くからね」


温かいご飯と味噌汁をテーブルに並べてくれながら、お母さんが柔らかく笑った。


「ありがとう、お母さん。すごく素敵な喫茶店になったから、楽しみにしてて」


私も同じように笑って言うと、お母さんは少し驚いたのか目を見開く。


「どうしたの?」と聞くと、お母さんは私の右頬に優しく手を添えて、それから言った。


「こういう行事の日に、香波が朝から笑ってくれたの初めてだね」


「え?」


「こういう学校行事の時、友達がいないからつまんない、行きたくないって、今までだったら憂鬱そうにしてたじゃない。それが今日は、こんなにも楽しそうにしてる」


そ、そうかな……。


でも、今までの友達がひとりもいなかった、私だったら、文化祭なんて学校行事として必要なものだとは思わなかったし、なんなら何の勉強にもならない無駄な時間だと感じていたかもしれない。


でも、今年はそうじゃない。
一緒に頑張ってきたクラスメイトのみんな、アキちゃん、そして相沢くんがいる。


憂鬱なんていう言葉、頭に浮かんですら来なかった。